女性物の総絞り羽織から、3つのハンドバッグを作りました。素材となったのは、戦後に着用された黒色の羽織で、当時の流行に敏感な女性が好んで着用したものでしょうか。今回の作品では、この羽織をめいいっぱいアップサイクルする方法はないかと考え、一枚の羽織から、ハンドバッグを3個作ることにしました。
かつて布があまり豊富にない時代には、着物を始めとする布地は、非常に大切に扱われていました。着物も、衣服としての最初の役目を終えたら、利用可能な場所を使って、羽織や襦袢に作り変えられていました。それでも生地がヨレてきたら、座布団やお手玉、はたきに使ったりと、最後まで無駄なく使われてきました。着物のアップサイクルは、着物のまだ使える部分を、ハンドバッグや小物入れに作り変えているわけですが、自分の先祖がそうしてきたように、物を「無駄なく使う」ことにこだわっています。
3個のハンドバッグを作るにあたっては、それぞれ形は異なりますが、全て「一つ持ち手」で仕上げることにこだわりました。持ち手は、絞りの柔らかい素材が最大限に活かせるように、共布で作りました。
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総絞り絵羽柄の懐古袋
反物の長方形の特徴を最大限に活用するために、和裁の技法で作るのがこの「懐古袋」です。古くは、江戸時代に作られた袋がもとで、いにしえを懐かしんで名づけたことから「懐古袋」と呼ばれるようになったそうです。長方形の着物から三角形をとり、それを繰り返すことで、生地を余すことなく使うことができます。
懐古袋に合わせる持ち手は、共布を三つ編みにしています。柔らかく円を描くようなシンプルなフォルムではありますが、同一の生地で統一されており無駄な装飾がないことから、洗練された美しさが際立ちます。肩掛けした際も、脇にぴったりと収まります。和裁技術を詰め込んだバッグですが、もちろんお洋服にも合わせていただけます。
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総絞り絵羽柄の通し襠ありハンドバッグ
懐古袋より、ひとまわり小さなハンドバッグです。こちらのハンドバッグのハンドルは、芯棒を入れて共布で包みました。握った時の手のひらに、しっくりと馴染む太さです。裏地は、喪服の羽織を使用しています。次にご紹介する3つ目のハンドバッグを含め、洋裁のハンドバッグを作るときは、型を合わせて布を裁断します。懐古袋が三角形を繰り返すことで着物を無駄なく使えるのとは異なり、裁断後に、あまり布が出ます。
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総絞り絵羽柄の舟底型ハンドバッグ
3つ目は、一番小さいサイズの舟底型ハンドバッグです。共布の細身のハンドルには、取り外しができるようにDカンをつけました。持ち手を取り外して、お好きな長さのストラップと交換していただければ、例えばショルダーバッグとしてもお使いいただけます。
着物が古びてきたら、座布団に作り変えたり、お手玉にしたりと、かつてはまさに「使い切り」の文化であったわけですが、現代においても、ものを大切にしてきた先祖代々の思いを大切にしながら、着物の素材自体の良さと、それにまつわる数々の思い出を、アップサイクルを通じて守っていければと思うこの頃です。